裁量と自動トレードの間の大きな溝
自動車もいずれ自動に切り替わるのだろうけど、
法整備を始めとしてまだまだ課題が多いな
先月出張した際に、他愛のない会話がかわされた。
この出張は吉田が経営している競馬ソフト会社の打ち合わせで、いくつか重要な議題があるけど、その中のひとつとして「競馬の自動運転」についての議題もあったため、自然と出てきた話である。
トヨタ車の「プリクラッシュシステム」を体感した時もそうだけど、今の車は電子制御が基本になっていて、ドライバーの負担をかなり軽減してくれる。「プリクラッシュシステム」はオートクルーズ(設定した速度に自動的に調整してくれる)と組み合わせると、非常に楽になる。
単なるオートクルーズだけだと、車間が詰まった時は自分で速度を調整する必要があるが、プリクラッシュシステムがあると、車間が詰まれば自動的に速度を落とし、前がいなくなれば自動的に設定した速度まで加速する。
ドライバーはハンドルを握っているだけというラクチンさ。
もちろん、現状では高速道路しか用途がないわけだけど、
そこまでやってくれるなら次は自動運転と考えるのが人間でしょ。
車の場合は、法整備の問題をふくめて社会的に解決しなければならない課題が多い。でも、競馬やFXでは自動運転は当たり前のように普及している。
まぁ何かあっても、即人命につながるような事故にはならないというのがあるが、同時に機械化された世界特有の問題をはらんでいることに気づく。
裁量トレードと自動トレードの最大の差
最初の競馬自動運転ソフトをリリースしたのが2002年、FXの自動トレードシステムの開発に着手したのが2008年。それぞれ12年、7年が経過している。
そして、吉田は「FXで完全機械化は可能か?」なんてタイトルのブログをやってます。
もともとプログラムを自由に作れる立場なので、「いかに楽をするか」、「時間を有効に使うか」なんてことをずっと考えてきたわけで、トレードの分野でも自動トレードと裁量トレードの差について考えてきたわけです。
自分の経験や周りの人の意見を聞いて、自動トレードと裁量トレードの間に感じていた「差」が何なのかに気づきました。
違いは表面的なことではなく、意識的、本質的な部分です。
その違いは…
- 裁量トレード:自分ですべてをコントロールしている意識がある
- 自動トレード:システムに対して常に不安が残る
勝っても負けても、裁量トレードの場合は100%自分に原因があるので、納得がいきます。もちろん、メンタル的な側面やルールを守った守らないの話はあるけど、最終的にはトレーダー本人の責任であることに異存のある人はいないでしょ。
では、自動トレードの場合は?
市販の自動トレードシステム(EA)、自作のシステム問わず、
どこかに漠然とした不安感のようなものを感じてます。
特に、ブラックボックスになってる市販のEAがひどい。
自分が作ったシステムでも、裁量トレードの感覚を100%再現できれいるならともかく、自動的にポジションを持つことへの不安感はぬぐいきれない。
その最大の要因が
すべてをコントロールしている
という錯覚にある
はい。錯覚です。
よくよく考えればすべてをコントロールできるなんてムシのいい話はないけど、起こったことは100%自己責任と考えられるので、この差はとても大きな問題なのです。
これは、たぶん、自動運転車の世界でも発生する問題ですよ。
つまり人間の心の問題です。
なくなってもあきらめが付く金額しか投資しない
「なくなってもあきらめが付く金額しか投資しない」
これは、競馬の自動運転についての予備調査をやった時に、耳にしたセリフです。でも、これがある種「自動運転」というものに対するごく自然な反応だと思います。
吉田はブログネタの参考にと思って、メルマガなどもいくつか取ってますが、その中でも「オンライントレードシステムズのメタトレーダー自動売買EA研究所」というメルマガをけっこう参考にしてます。
こまごまと宣伝する気はないので、興味があればリンク先からバックナンバーを読んでください。
このメルマガは定期的にEAの成績についてのコメントが掲載されてます。吉田の場合は1年以上のスパンで流し読みしているので、傾向がわかっています。著者は市販のEAでポートフォリオを組んでいますが、EAに対して「半信半疑」というのが読み取れます。
市販のEAをライブで運用しているので、まぁそんなもんでしょ。
著者は他にも不動産や海外投資も行っており、資産を分散投資しています。FX自動売買(EA)はそのひとつで、しかも割合はずいぶんと抑えてると思います。その一方で、投資ファンドにも投資しているようで、そっちのほうがEAよりも割合は多いようです。
ファンドというと縁遠い存在に感じますけど、ちゃんとした人とつながっているとこういう話はボツボツ入ってきます。自分が委託するかは別問題だけどね。多くの場合、投資ファンドというと、人の手で運用されているものがほとんどです。たまに自動売買のファンドも聞くけど、自分で自動売買ロジックを持った人が、システム開発会社に委託開発しても、開発費は最低1億円はかかるので、初期資金がないと立ち上がらない。
でも、投資する側からすると、機械が運用してようが、人が運用してようが同じなんです。大事なのは「そのファンドにお金を預けても大丈夫か?」
言い換えると「信用できるのか」の一点につきます。
察しのいい人は気づいたと思いますが、自分で自動トレードをする場合も、誰か(ファンド)に運用を委託する場合も、最後に「信用できるかどうか」に行き着きます。
たまに「お金を預けたらあっという間に元本の半分まで目減りした」なんて話も耳にします。ちょっと前にもAIJ投資顧問が年金を溶かしたなんてニュースもありましたね(笑)。
人が運用してるから。機械が運用してるから。
どっちでもいいの。
信用して任せられるかだから!
人が作った自動トレードシステム(EA)で資産運用するというのは、
この点にすごく不安が残ります。なので冒頭にあるように
「なくなってもあきらめが付く金額しか投資しない」
という結論に落ち着くわけです。
でも、実際に運用して、信用できると思ったら資金を増やして皮算用するのも人間です。リスク自体は変わらないのにね(笑)。
世の中の投資詐欺は、最初に安心させて、内情は自転車操業なんてのがゴロゴロあるので、こういう心理をうまくつかれてるのでしょう。
まとめ:人は機械を信用できるか?
投資の世界では、自動トレードがかなりの割合になってきているようです。
(金額的な割合なのかは不明だけど)
でも、これは一般の人が接点の少ないファンドの世界の話なので、
身近な話題で考えてみましょう。
冒頭で「車の自動運転の話」をしました。
たぶん、近い将来自動運転の車は発売されるでしょう。
しかし、普及にはそうとう苦労するかもしれません。
これは「システムの運転が信用できるか」という先ほどの心理の話になります。現在、プリクラッシュ系のシステムを備えた車は、あくまでも人間の運転のアシストにすぎません。システム稼働中でも、ブレーキやアクセルを操作すると、システムは解除されます。
車の自動運転の場合は、加速減速に加え、ハンドル操作もシステムに任せることになります。さすがにサーキットを走るような車に自動運転をつけるわけはないから、高速道や一般道を走る車が対象になります。
自動運転から手動に切り替えるタイミングはどこか。
それは、何らかの危機を察知した時でしょう。
当然、自動運転システムは急に飛び出してきた障害物(人や自転車)を割けるため、急ブレーキや回避を行なうでしょうが、乗っている人がシステムにそれを任せておけるかは別です。
システムに介在した結果、よりひどい事故になる可能性もあります。
車の自動運転の場合は、FXや競馬の自動運転と異なり、賭けるチップは自分と他人の命です。「なくなってもあきらめが付く」と言い切るには、かなりリスクを取らなければなりません。
自動トレードと車の自動運転。
一見接点がないように思えるけど、「システムに対する信用」と「システムへの干渉」は同じ種類のものです。
自動運転とは関係ないけど、飛行機の世界はも事故るとほとんど助からないから、21世紀になっても飛行機に対して恐怖心を抱いてる人がいます。
それでも、離陸時に騒ぐ人がいないのは、すでに多くの実績を積んでるためですね。飛行機の場合、ライト兄弟が最初の飛行に成功してから、第1次、第2次世界大戦中に軍人さんが盛大な実験をしてくれたため、自動車の自動運転に比べると、実績がある分旅客機への抵抗も少なかったと思います。
(それでもこんな鉄の塊が飛ぶはずがないというのは、さんざん使い古されたネタですね)
自動というのは、誰もが行き着くところですが、人間がそれに対応できるほど進歩しているかと言われれば、難しいところです。
車の完全自動化はどうなるのでしょうか?
私的には、まず高速道路に無人運転中のノボリを掲げた車が走り、そのあと、下道を走る光景が見られる。
10年ほど、大きな事故もなければ、完全に世間の常識として定着するのではないかと想像しています。
また、環境的な運が味方すればもっともっと早くなると思っています。
<<賭けるチップは自分と他人の命
おっそろしいたとえですが、ホント、おっしゃる通りですね…汗