テクニカルの処方箋。依存症にご注意
さて、前回「テクニカルと相場のおかしな関係」の続きです。
テクニカル分析なんて言葉があるように、トレードにおいてテクニカル指標は結構重要な位置を占めてます。吉田も使うし、チャートを見ている人ならすべての人がテクニカルを使ってます。
ほら、ローソク足やバーチャートも立派なテクニカルですよ。
さて、前回の記事で、お金(通貨)には物の値段と照らし合わせれば、価値基準のようなものが存在すると説明しました。でも、それが「通過 対 通貨」の相場になってしまうと、絶対的な価値基準はなくなるというお話をしました。
これは相場の世界には、価値の比較対象が無いためです。
あえて言うなら、過去のレートに照らして、今が通貨高だ、通貨安だというだけであり、これは相対的な価値しかないですね。
言い換えると
極めてアバウトな基準しかない
ということです。
ローソク足も立派なテクニカルですが、移動平均やストキャスティクスなど代表的なテクニカル指標に比べると、扱いづらく感じるのも事実。
そこで、判断を容易にするために、さまざまなテクニカル指標を駆使するわけです。
テクニカルについて説明する前に、通貨が動く要因について
触れておきましょう。
なぜ通貨レートが動くのか?
一部の国を除き、ほとんどの国の通貨は変動相場制です。
特に、ドルやユーロ、円、ポンドといったハードカレンシーは100%変動相場制です。逆に固定相場とは、1ドル=360円時代の日本のように、状況によらず常に同じレートで取引できる相場を指します。
為替を触ってる人にとっては、当たり前の話。「変動相場」の言葉の意味する通り、通貨レートは何らかの要因により変動します。
その要因とは何でしょう?
根源的な原因は、諸説あるので学術的な解説を知りたい人は
Google先生にでも聞いてくださいね。
(あくまでも、うちのブログの視点での要因分析です)
(1) 機関投資家による投機的な売買
銀行、ヘッジファンド、保険会社など、機関投資家と言われている連中は、一定期間で何%の利益を出すことが義務付けられています。成績が悪ければ、即解雇です。だからこそ、プロップディーラーは高給取りなのですが、彼らは一般的なトレーダーと同じように、毎日のようにチャートに向かってトレードをしています。
(2) お金持ち・資産家の資産運用
世の中にはうなるほど金を持った連中がいます。
彼らは自分の資産をさまざまな形で保持しています。単に銀行に預けるだけでなく、時には証券や金、銀、不動産などの形で存在します。
もちろん、自国以外の通貨でも資産を保持しています。2014年8月ぐらいからの円相場を円安に押し上げているのは、彼らの存在が大きでしょう。彼らは政治動向、世情をみながら、自分の資産をドル、円、ユーロなどの口座に移します。この時の大きなマネーフローが、テクニカルを無視したようなレート変動を起こします。
(3)企業の経済活動
トヨタのようなグローバル企業は、自国通貨だけで完結するものではなく、海外に売った商品の代金、あるいは海外から輸入した資材の料金の決裁のため、為替の売買を行います。
今はグローバル化に対応した動き方をしているので、必ずドルを円に変えるといった動きが起きるわけじゃありませんが、外貨という形で保持しているため、円高の要因になると考えられています。
実際、3月、6月、9月といった4半期ごとの決算月では、レート変動要因になっていることがあります。
(4)為替介入や政策金利などの政府筋の影響
政府は、自国の景気動向や国際情勢を見ながら、為替レートに影響を与えるさまざまな手段を講じています。一番わかり易いのが、中央銀行による為替介入です。その他に、各種経済指標、要人発言などもトリガーになります。
しかし、詰まるところ政策金利などの経済政策を材料に、機関投資家や資産家のお金を動かしています。
要因は多々ありますが、ぶっちゃけて言うと
金を持ってる奴が相場レート
を動かしている
ということですね。
ローソク足はなぜ扱いづらい?
ローソク足やバーチャートなどは、古くから使われている代表的なテクニカルです。しかし、ほとんどの人は、素のままのチャートを使わず、あれこれとカスタマイズしています。
なぜか?
ローソク足は非常に重要な情報ですが、情報としては詳細すぎるため、そこから有意な意味を汲み取るには「知識」と「技術」が必要です。
特に株でなく、為替から相場の世界にはいった人は、いきなり移動平均などその他テクニカルからはいるので、ローソク足の見方を知らないと言われています。
実際、吉田も入門書片手にこの世界に入りましたが、ほとんど四本値の読み方(高値、安値、始値、終値、陰線、陽線)止まりです。
そして、いきなりSMAやEMAといったテクニカル指標の話になってました。
たまに突っ込んだローソク足の見方を講義しているかと思えば、「増田足」や「酒田五法」などのローソク足のパターンの講釈。
はっきり言っときますが、「酒田五法」のパターンなんていくら覚えても役に立ちませんよ。
為替和尚@FX寺子屋的には、ローソク足の足組も重視しますが、パターンを見ているのではなく
ローソク足に現れた人の心理
を読み取っている
決して、明けの明星とか、パターンで判断しているわけじゃないです。
ちょっと、脱線しました(笑)。
ローソク足は一言で言えば、ある時間の相場の値動きをひと目で分かる図に置き換えたものですが、逆に言えば、「単なる値動き」です。
これをきちんと解説している入門書やサイトがない以上、ローソク足だけのチャートはさっぱりわからないと判断されてもしかたがないと思います。
だから、ボクは引くんだよ。
精一杯、太い線で。
なんてブルーハーツ的な乗りで、チャート上に線を引きまくります。
それこそ…
MA、ボリバン、トレンドラインにチャネルライン。これはフィボで、これはピボット。いつしかチャートは線だらけ。
どれがどれだかわかんねー!
状態になります(笑)。
冗談はさておき、ローソク足だけでは判断のつかなかったチャートも、適度なテクニカルや補助線(トレンドライン、水平線)を入れていくと、これまで見えなかったチャートの状態が見えてきます。
それこそ、勝てるかどうかは別ですが、入門して1ヶ月もすれば、どこで打ち込めばいいかはわかるようになります。
テクニカルの処方箋
テクニカルは、チャートの事象を簡略化し、シンプルにし、わかりやすくしてくれます。実際、線も何もひかれてないチャートより、適切にテクニカルが配置されたチャートのほうが見やすいのも確かです。
でも、ここに大きな落とし穴があります。
というより、ほとんどの人がハマって抜け出せなくなっている罠ですね。
(1) テクニカルへの過度な依存
テクニカルを駆使すればわかりづらいチャートも、単純化されて見やすく、理解しやすくなります。
そのため、ローソク足の情報よりも、移動平均やオシレーター(ストキャスティクス、RSIなど)の情報を優先するようになります。
「ローソク足ガン無視」状態です。
(2) シグナルとして利用する
FXの情報商材でも、シグナル配信などをよく見かけます。
エントリーのタイミングをシグナルで知らせてくれるやつですね。
実際、ゴールデンクロスにデッドクロスって言葉が示すように、移動平均のクロスからはじまるシグナル化の流れは、判断根拠をいかに単純化するかというトレーダーの要求によるものでしょう。
実際、エントリーにシグナルを使ってる人は多いのでは?
テクニカル依存症に注意
テクニカルの情報に依存し、エントリーや手仕舞のタイミングまでテクニカルに頼るようになると、すでにテクニカル依存症の症状が出てます。
EAのような自動売買にする場合は、テクニカルだけを組み合わせることはありますが、裁量トレードでは、MAなどのテクニカルだけに依存するのはあまりよい状況とはいえません。
テクニカルはチャートの事象
を単純化したものです!
そう。単純化しただけのものです。MACDのクロスやRSIのダイバージェンスなどが観測された時には、すでにメインチャートで事が起こってます。
これが寺子屋的に、「テクニカルはエントリーには使えない」といっている理由です。
リアルタイムの値動きを記録している「ローソク足」が最速のテクニカルであり、現在の相場の情報を伝えるものです。
ほとんどのテクニカルは、チャートの右端では役に立たない
これも何度かお伝えしているとおりですね。
でも、チャートの左側で起きている状況は、テクニカルを上手に使うことで把握できます。
エントリータイミングなどをシグナルに頼ってる人は、そんなもの窓から投げ捨てましょう。それ以外のものでタイミングを図るようにしてみてください。
もし、あなたが「当て屋」としての技術を今より向上させたいと思うのであれば、よりワークするテクニカルを永遠と探すのではなく、
テクニカルによってどんなチャートの事象を単純化して捉えているのか
これに着目するようにしてください。
テンプレ的に、「オシレータは逆張り用で、ドテンのタイミングをとらえるためだ」みたいな考え方はダメですよ。
自分が見ているテクニカル、オシレータがどんな現象を単純化したもので、どういう特性なのかを理解してください。でないと、いつまでたってもボリバン2σタッチで逆張りエントリー。でも、バンドウォークでいつも引かされるなんてことがいつまでも続きます。3σ、4σ、5σにあげたところで同じですよ。
- テクニカルで何を単純化したいのか
- そのテクニカルはどういう性質か
最低でもこの2つを念頭に置く必要があります。
テクニカルのテンプレ的使い方は、教科書的な書籍などに見られますが、「2σタッチだけで逆張りしている人」は負け組ですよ。
最後になりますが、チャートにテクニカルを導入した意味を思い出してください。「通貨 対 通貨」の世界では、レートの判断基準がないからテクニカルを導入しました。でも、それを忘れて、テクニカルにとらわれるのは本末転倒です。
チャートを作りこむことは大切ですが、不必要な情報はかえって混乱のもとです。これを機会に、チャートを見なおしてみてくださいね。
ロボくんのアドバイスと被りますが…(笑)多くのテクニカルは、作者が意図した事と、違う使い方として定着しているのでは無いかと思えます。
実際、色々と検証していると、結局、自作テクニカルになったり、『ない方がいいじゃん!』って感じになってきます(笑)
これは窓から投げ捨て現象かと…(笑)
こういった方は多いのでは無いかと思います(笑)