FXはゼロサムゲームじゃない!
読者の方から公式サイトにお問い合わせがありました。
為替はゼロサムゲーム?
おまえバカじゃねーの?
究極的には国がリスクを背負うんだよ。
スイス中銀のように。
しったかぶってんじゃねーよ、タコ坊主。(原文ママ)
匿名希望の方です。
はい、言葉遣いはまったくなってませんが、FXがゼロサムゲームか否か? リスクを中央銀行が負うという意見は面白いので、ブログで取り上げることにしました。
提案は2つあります。
- ひとつ目は「為替(FX)はゼロサムゲームじゃない」
- ふたつ目は「最終的なリスクは国が負う」
この2つを検証してみたいと思います。
最終リスクを負うのは誰か?
まず、ふたつ目の「最終的なリスクは国が負う(スイス中央銀行のように)」という部分について考えてみたいと思います。
結論から言うと、
最終リスクは国に税金を
納める国民が負う
これです。中央銀行は独自の裁量を与えられた組織ですが、基本方針については国策になります。スイス銀行の為替政策は、ユーロに対して特定のレンジに収まるように、積極的に介入を行うと宣言することです。防衛ラインを明言してます。明言する利点としては、実弾を放り込まなくても済む局面があるためです。
中国はどうか? この国は固定相場をとってますが、実質はドルペッグ制で、ドルに連動して動きます。韓国も積極的な介入を行う国(例:ワロス曲線)として有名です。
日本は? 日本は日銀砲に代表されるような、巨額の為替介入を行いますが、基本的には為替レートを市場に委ねています。
各国の中央銀行のスタンスは違いますが、共通点は国の政策にもとづいていることです。中央銀行の役割のひとつに、自国の通貨の安定化があります。為替介入は手段のひとつです。
中央銀行や国の運営資金は、国民の税金で賄われているので、最終リスクを国が負うというのであれば、税金を収めている国民が負担していることになります。政府お役人は税金を使っても、自分たちの懐は痛みません。
また、吉田がこの件で匿名希望さんの誤りを指摘したいのは…
自分が相場に負けた時、中央銀行や国が負担してくれるわけではない
という点です。「究極的には」と逃げを打ってますが、仮にそうだとしても自分のポジションに何の影響があるのでしょうか?
為替相場はゼロサムゲームか?
中央銀行がリスクを負う件は、「為替相場はゼロサムゲームではない」と言いたいのだと吉田は解釈しています。吉田と師匠(為替和尚)の見解ですが…
為替相場は世界最凶の
ゼロサムゲームである!
究極の弱肉強食の世界である!
では、為替相場の仕組みをふくめ、この点を説明していきたいと思います。
為替取引の仕組み
為替にかぎらず、相場と名のつくものは、競馬や他のギャンブルと違って「胴元」がいません。株式市場も、取引する場は提供されていますが、基本的には「買いたい」と思っても「売りたい」と思う人がいないと成立しません。
「究極的には」需要と供給によってなりたつ市場だと考えています。
利益が出る仕組み
スワップポイント(金利)ではなく、為替差益による利益をベースに考えます。
為替差益の場合、自分が利益を上げるには、誰かがその分損します。
図で説明しましょう。
(※クリックで拡大します)
あなたが、トレンドの底値から買いポジションを持っていたとします。十分な利益が出たので決済したいと思います。決済=反対売買なので、トレンドの頂上付近で売りポジションをもつことになります。
売りポジションをもつには、誰かがその局面で買ってくれなければなりません。トレンドの頂上付近で買うということは、高値づかみのリスクを負い、図では実際にそうなってます(そういう図を抜いてますけど…笑)。
ゼロサムゲームの定義は?
もしかしたら、ゼロサムゲームの定義を取り違えてるかもしれないので、Google先生に聞いてみました。複数のサイトの共通した見解は…
あるプレイヤーの利益が増えれば、他のプレイヤーの損失が増える。ゲーム全体の参加者の得点と失点の総和がゼロのゲームを、「ゼロサムゲーム」といいます。
余談ですけど、株式相場は「非ゼロサムゲーム」という見解もありました。
上昇トレンドでは、時価総額が増えた分だけみんなが得をしますが、
下降トレンドでは時価総額が減った分だけみんなが損をする。ですから、株価が全体的に上昇した場合、その分パイも増える。
それに対して、株価が全体的に下降した場合、その分パイは減少する。
ですから、この場合、利得の総和がゼロにはなりませんから、
ゼロサムには当てはまらないんですね。
為替相場は究極のゼロサムゲームである
ゼロサムゲームの定義と、為替相場(差益)で利益が出る仕組みを考えると、
「為替相場はゼロサムゲーム」であるといえます。
これは師匠ともよく話していることですが、FX(為替相場)は
世界最大・最凶の鉄火場である
ということです。この世界にはさまざまなプレイヤーがおり、我々のような個人投資家、銀行やヘッジファンドのような機関投資家、国家(中央銀行)などさまざまです。
銀行のような機関投資家は、顧客のオーダー情報をもとにトレードをしていることもありますし、ヘッジファンドは素人に餌を見せて飛びつかせて、罠にはめたりします。
なにより株式市場との最大の違いは、投資家を守る仕組みがまったく無いことです。株式市場には「サーキットブレーカー制度」があり、値動きが想定範囲から外れる場合には、取引停止になります。
FXにも、マージンコール(追証)という制度がありますが、これはレバレッジをきかせて取引をするので、損失によりポジションを維持するだけの証拠金が不足した場合、ポジションを維持したいなら証拠金を追加しなさいと言ってるだけです。
この世界は、大きな玉を持ったプレイヤーが、自分の利益を確保するために、誰かを食い物にしてます。騙し合いの世界です。
ときには「ポジショントーク」と言われるメディアを使った、情報戦を仕掛けてくることもあります。
ここで匿名希望さんのコメントを再び。
為替はゼロサムゲーム?
おまえバカじゃねーの?
究極的には国がリスクを背負うんだよ。
はい、為替はゼロサムゲームです。それも究極の。
国がリスクを負う? では、アベノミクスでドル円が上げ相場になった時に、「よーし! 俺の塩漬けになったドル円120円ロングの出番か!」と言っていた人は、国が救ってくれるのでしょうか?
為替和尚@FX寺子屋の公式見解は、「為替相場はゼロサムゲーム」です。
スイス中央銀行の為替政策を知って、「究極的には国がリスクを背負う」と言いたかっただけかもしれませんね。否定はしませんが、その考えでは95%の負け組から抜け出すことは無理ですよ(もっと勉強しましょうね)。
その局面における「買い手の心理」と「売り手の心理」。これを理解すると、為替相場をもっと理解できると思います。
Winner takes all.
(勝者が全てを手に入れる)
横から失礼します。
トレーダーとして、感覚的にはゼロサムゲームだと思いますが、
差し引きゼロとなるものをゼロサムゲームだとすると、
FXの場合は実需の部分(例えば日本の輸出業者の輸出代金の円転=ドル円売りっぱなし、輸入業者の輸入代金支払いのためのドル円買いっぱなし)は反対売買による決済をしないので、これを含めて差し引きするとゼロにはならないと思いますがいかがでしょうか。
また、インターバンクで売りと買いのレートを提示する大手銀行とか個人トレーダー等にレートを提示するFX業者は胴元と言えそうな気もしますが、確実に寺銭(スプレッド)が利益になって残るわけではないですね。
ゼロサムゲームで有ろうが無かろうが、差益狙いで参加する事は、鉄火場とは比べ物にならないリスクを負うことに違いはありませんね。
ojama しました。