奮戦記:人と機械の差
前回のあらすじ(流れを読みきれ!)
5分の流れに従う。これが師匠である為替和尚が吉田に伝えた
決断であった。師匠の手法はスキャルピングである。できるだけ早い時間足を見て判断を下す必要があり、吉田も師匠もエントリーの時に使う1分足チャートに固執しすぎた。
だが、エントリーポイントはあくまでも点であり、実際にそのポイントで打ち込むにはそれまでの流れを判断する必要がある。
つまり「面」である。それが5分の流れなのだ。
1分足はエントリー用で、流れを見るのは5分。そして、チャートの右端で判断する以上、そこを超えたら買い(売り)というポイントで打ち込んでみなければ話は進まない。
裁量トレードでは当たり前のように考えられていることも、
いざ自動化しようとすると機械で処理しやすい考え方に
よってしまうのだ。
打ち込むべきポイントは見えたが、それにはヨコの流れを判断する必要があった。
狙いは2σからの戻りの反発
使用するチャートは1分足。ベースがスキャルピングである以上、
これは変わらない。しかし、1分足の挙動にまどわされることなく、
5分の流れについていく必要がある。
1分足チャートに5分のボリンジャーバンドを入れているのは、
メイントレンドをきちんと意識するためである。
そして、エントリーのポイントは5分のボリンジャーバンドの
2σ(3σ)からの戻りが、ミドルバンドなどで反発するポイントである。
これも連日の電話会議で決定したことだ。
会議の最後に、師匠が決まって言う台詞がある。
終わったチャートでなら、なんとでも言える。
大事なのはチャートの右端で判断することやで!
くり返す言葉にこめられた意味は重い。
特に自動トレードの場合、機械はエントリーポイントが来るまでいくらでも待てる。だから、あれこれ条件をつけてエントリーポイントを絞り込もうとする。でも、これは単に点のエントリーポイントを探しているだけだ。
入ってみてアカンかったら切る
ここへ来て、吉田は師匠がくり返し言うセリフの意味を
心から理解した気がした。
もちろん、エントリーをないがしろにするわけではない。
しかし、エントリーポイントで揃っている条件はあくまでも「点」の情報であり、それよりも…
エントリーポイントに至るまで
の相場の流れのほうが重要
そこそこのパフォーマンスが出ていたが、ドローダウンの大きかったトレーディングエッジにはこの視点が欠けていた。確かに、エントリー時に高値更新、安値更新を見ている。しかし、それでも点の情報なのだ。
エントリーは点でも良い。
でも、そこに至るまでの過程=面の情報をいかに判断するか。
これが現在の課題だった。
相場の流れを認識させるには?
タテ・ヨコ・ナナメの概念。4つの戦局。1時間の節。5分の流れ。
材料は揃ってきた。
エントリーについても、入ってみなければわからない以上、エントリーポイント(点)の条件だけをあれこれ上げても意味がない。
これらをどう調理するか?
師匠の相場理論をかなり理解してきたとはいえ、
ここから先に行くのは一筋縄ではいかない。
吉田もチャートを見ながら、確認用のインジケータを作ってあれこれ考えていたが、一向に答えは見えない。
そんな時、FX友の会というFXサークルのオフ会があるので、吉田っちも参加しないか? という誘いが師匠よりあった。
煮詰まっている時期でもあったし、気分転換となにより一緒にチャートを見ながら話したほうがいろいろと解決策が思い浮かぶかもしれないと思い、二つ返事で了承した。
大阪入りした吉田は、いつものように師匠の家に行くと、早速トレードルールの作成で煮詰まっていることを打ち明けた。
師匠「なるほどね。材料は揃ってるけど、それをどう組み合わせるかが整理できひんわけやな?」
吉田「そうなんです。自分の中でもかなりいい線までまとまっていると思うんですけど、なんか今ひとつまとまりきらないんですよ」
師匠「今はどんな感じ?」
吉田「えっと、まずは5分の流れに従うので、SMA100(5分のボリバンミドルバンドSMA20を1分足に表示させたもの)より上の時は、買い戦略。下の時は売り戦略。それで、押し目を拾うのを基本とします」
師匠「そやな。押し目の定義は?」
吉田「第3波を狙うには、第2波の戻りが必要なのでこう定義しました。」
- 5分のボリンジャーバンドの2σないし3σにタッチしていること。
- 押し目の始点となるところは、5分のボリンジャーバンドのミドルバンドか、-2σ、-3σにタッチしていること」
師匠「条件としていいと思うよ。何があかんの?」
吉田「単にフラグを立てていくだけだと、ヨコの流れを読み切れてないと思うんですよ」
師匠「フラグ?」
吉田「あ、ゲームなんかで先に進むために、条件をみたしたときのことをフラグっていうんです」
師匠「なるほど。プログラムのことは知らんけど、条件的にはそれでいいように思えるけど」
吉田「なら、チャートを見ながら説明しますけど、例えば、こういう時はエントリーしますか?」
師匠「エントリーしないなぁ」
吉田「そう、それなんです! 人間が裁量トレードする場合、トレードルールの条件を満たしていても、見送るポイントが出てくるんですよ」
師匠「なるほど、吉田っちの言いたいことがわかってきたで」
吉田「エントリーまでの過程である、そこに至るまでのヨコの流れ。これを判断させないと結局、トレーディングエッジの時と同じ間違いに陥りそうなんですよ」師匠「それでもチャートの右端で判断する以上、入ってみなければわからんで」
白熱した議論が繰り広げられた後、師匠がひとつの提案をしてきた。
メインチャートの動きが読み取りづらいなら、オシレータを利用してみたらどうか? というものだった。ストキャスティクスやRSIなどのオシレータを逆張りのシグナルに使う人は多い。
しかし、師匠に言わせると、シグナルとしてオシレータを利用することは誤りだという。オシレータはどうしても終値ベースでの計算になるので、ローソク足に比べて遅いのでエントリーには使えないらしい。
だが、適切なパラメータに設定されたオシレータは、複雑なチャートの動きを単純化してくれるので、流れを読み取りには最適だという。
同時にオシレータに頼りきってはいけないとも師匠は説く。
メインチャートの情報、オシレータの情報、双方を利用してこそ意味がある。
この時、吉田と師匠のチャートで利用していたオシレータは、ストキャスティクスのみである。これをもとに相場の流れを読み解く足がかりに出来ないか?
1時間半ほどの会議ではあったが、方向性は明確に示された。
これで自動トレード開発を進められると思っていたが、別の案件が持ち上がった。為替和尚公式サイトの設立である。
人と機械の差というタイトルに惹かれてアクセスしました。
トレードでは確率的思考が大事といわれますが
機械がやるのと人間がやるのではやはり違いがありますよね。
機械・・・確率という「数字」そのもので勝負する
人間・・・確率的思考という「考え方」「心の在り方」で勝負する
といった感じでしょうか。