奮戦記:流れを読みきれ!
前回のあらすじ(ヨコの流れを読み取れ!)
師匠の為替和尚より、「押し目、ドテン、レンジブレイク」と3種類のチャートパターンを切り抜くことを宿題に出された吉田は、2日かけてそれぞれのチャートの切り抜きを行った。
各戦局ごとのチャートを切り抜いてはみたものの、あとから見ればそれぞれの戦局が定義できるがチャートの右端で判断できるかといえば、難しかった。
人間はチャートを面でとらえ、機械は点でとらえるという
特性の差を改めて認識させられた形だった。そんな時、師匠から1通のメールが届いた。
「FXを極めた感じ♪ 川の流れに身を任せて。
一子相伝の無想転生、奥義を極めたで!」
とだけ書かれたメールは謎めいていた。
「FXを極めた感じ」。
その他の文面の意味はわからなくても、冒頭の言葉がもつ意味は重い。
そして、川の流れと、無想転生。この2つの単語に込められた意味は?
川の流れに身を任せて…
謎めいたメールが送られてから数日後。
吉田はいつもの様に師匠と電話会議を行った。
吉田「この間のメール、なんですか? 意味がよくわからないんですけど…」
師匠「FXを極めたで! 結局、川の流れに身を任せる。無想転生や!」
吉田「それが意味わからんです! 無想転生って北斗の拳ですか?」
師匠「せや。一子相伝の奥義を極めたものだけが使える、究極奥義や!」
吉田「……。それがFXとなにか関係あるんですか?」
師匠「ちょっとチャート開いてもらえるか? 1分足で。
それでこのインジケータを放り込んで、そや、それ。パラメータは……」
師匠はMT4のチャートを広げると、インジケータをほうりこんで、
パラメータを設定し始めた。
師匠「これ見てくれるか?」
吉田「EUR/USDの1分足チャートですね。紫の線はボリバンの2σと3σですよね? となると、真ん中の太い線はボリバンのミドルバンド?」
師匠「SMAのパラメータは100に設定してある」
吉田「なんでSMAを100にしてあるんですか?」
師匠「普通ボリバンのミドルライン(SMA)のパラメータは20か21やろ?
それを5倍したから100なんや」
吉田「5倍? 5倍の根拠は?」
師匠「わからんか? 1分足のボリバンのミドルバンドはSMA 20や。それを5倍にすると5分足のミドルバンドになる。もちろん、細かい誤差はあるけど、かまへん」
吉田「SMA100に設定したボリバンを表示させているということは、1分足に5分足のボリバンを表示させているのと同じってことですね?」
師匠「そうそう。これまでSMAのパラメータといえば、65とかを使ってきたけど、あれは中長期の流れを見るために、1分足をベースにしたパラメータを入れただけやった。でも、チャートを見ながら改めて思ったのは、俺が見てる流れはあくまでも5分足だってことや」
吉田「5分足…。まぁ出会った時から、5分足で流れを見てましたね。
と言うことは、トレンドも5分の流れに従うってことですか?」
師匠「そうや。パラメータは俺が見ているチャートに合わせこまな。」
吉田「うーん、確かにその通りですね。これからは5分足をすべての基準に持ってくればいいってことですか?」
師匠「そう。で、次に発見したのがこれや。川の流れ。無想転生」
吉田「あ、それ! メールでも意味がわからなかったんですけど」※クリックで拡大
師匠「ええか、吉田っち、チャートを見ながら説明するな?
はい、ここでローソク足が-2σにタッチしました。ちょうど1時間の安値もおる。そこから跳ね返されて今度は+2σにタッチしました。ここにも1時間の高値がおる。」
吉田「逆張りルール?」
師匠「逆張りってわけじゃなく、流れに従ってるだけやで。それから+2σに跳ね返されてミドルバンドも抜けて何度か-3σにタッチしてから、ミドルまで押し戻される。そのあとどうなってる?」
吉田「ミドルに跳ね返されてまた下がってますね」
師匠「これや! 最初はトレンドが発生してないから、ミドルバンドは横向き。こからはSMA100より下にローソク足がおって、ボリバンも広がりながらミドルバンドも下向き出した。つまり、流れは下に変わった」
吉田「はい、見ればわかります」
師匠「ショート(売り)のポイントは、次に跳ね返されるここや!」
吉田「うーん、川の流れとの関連が見えませんけど」
師匠「川の流れは例え。ボリバンのσラインやミドルラインが流れを変えるポイントで、ローソク足はその中を流れる水をイメージするんや」
吉田「たしかに、そういう見方をすると、何かに跳ね返りながら逆サイドを目指しているように見えますね」
師匠「相場っていうのはメイントレンドがある。それが俺の場合は5分の流れ。そして、エントリーするタイミングは、闇雲に何もないところで入っとるわけやなく、それまでの流れが崩れるポイントで打ち込んでいるっと事に気がついたんや。それが川の流れってこと」
吉田「なるほどねぇ。そういう見方か。で、無想転生の方は?」
師匠「ケンシロウがラオウと戦ったときに使ったやろ。
相手の攻撃を受け流す技。あれや!」
吉田「抽象的なものを2つもくっつけないでください!」
入ってみなければチャートの右端で判断できない
吉田はチャートをさかのぼって、師匠に教わった見方でチェックしていった。確かに、川の流れのように、ボリバンのσバンドとミドルバンドに反発しながらローソク足が移動しているようにみえた。
吉田はメモ用紙を取り出し、気づいたことをメモした。
メモ用紙に書かれていたことは、次の2つだ。
- レンジ相場の時は、ミドルバンドがほぼ横に走り、ローソク足はσからミドルラインに向かう。
- トレンド相場の時は、ミドルラインからの跳ね返りが狙い目
メモを取りながら吉田は考えた。
これは右端で判断できるのだろうか?
吉田「師匠! ちょっと疑問に思ったことがあるんですけど、その前に無想転生の考え方をどうトレードに活かすかを教えてもらえますか?」
師匠「まず、メイントレンドが5分ってことに気づいたわけやから、SMA100より上のときは上しか攻めない。
逆にSMA100より下の時は下しか攻めない」
吉田「ヨコヨコのときは?」
師匠「レンジと判断して見送る」
吉田「エントリーは?」
師匠「まず、流れを見てローソク足がSMA100より下なら、-2σ、-3σから跳ね返ってくることを確認する。そして、ミドルラインにタッチして、1本前のローソク足の安値を抜けたらショートエントリー」
吉田「バンドウォークしてる時は?」
師匠「2σ、3σにタッチした足の最安値を抜けたら追撃やな。
これは押し目を拾わなあかんで!」
吉田「押し目拾うの難しくないですか?」
師匠「俺だったら、ここで打ち込むけど。なんとか拾われへんの?」
吉田「検討課題ですね…」
売り買い両サイドのエントリーポイントの説明を受けたあと、
しばし考えながら、師匠に疑問点をぶつけた。
吉田「これって、チャートの右端で判断出来ますかね?」
師匠「ネックラインを定義してもらう必要が有るやろな。
ここを抜けたら買いっ! 売りっ!ってポイントや」
吉田「ネックライン?」※クリックで拡大。
師匠「例えば、買いの場合はここや。この丸したところ」
吉田「トレンドの終わりだった場合は?」
師匠「そんなん、入ってみてからやないと判断つかへんで。入ってみてアカンかったら切る。終わったチャートなら、トレンドの終わりもわかるんやけど、どこまで上がるか、どこまで下がるかそれこそ神の味噌汁(神のみぞ知る)や(笑)」
確かに終わったチャートなら、トレンドの転換点も終焉もレンジのポイントもすべてわかる。その先がどうなるかなんてわからない。
だから、右端で判断するには結局、そこを超えたら売り買いポジションをもつところを決めてエントリーして見るより他はないのだ。
師匠は「吉田っち、今回の考え方に基づいて、ネックラインの定義をしてもらいたいんやけどできる?」と聞いてきた。確かに打ち込むべきポイントは分かったし、入ってみなければわからないのも事実。
出来るか? と聞かれたが、やるより他はないのだ。
吉田は「ちょっと時間をください」とだけ答えてその日の会議を終えた。
師匠の意味不明なメールで何を見つけたかは分かった。
そして、チャートの右端で判断するということは、結局、打ち込んでみないことにはなにも答えが出ないのだということも理解した。
電話会議のあと、しばらくチャートを眺めていた吉田は一言つぶやいた。
結局、ヨコの流れを読み取る必要があるな
アタァ! ポチッ!
(今回かなり笑ってしまいました^^)