奮戦記:戦局を定義せよ!
前回のあらすじ(モノサシをどう使うか?)
吉田の師匠である為替和尚は言った。
「レンジからのブレイクアウトを狙いたいなら、明確に”今がレンジやっ!”って判断できることが大事やねん」
言われてみればもっともな話であり、トレンド相場、ドテン、押し目、レンジ。ごく当たり前の相場の状態が、機械に判断できるように定義されていなければ、当然エントリーもできない。
まずは、相場の形を定義しなければ!
師匠の一言で、明確な方向性が示された。
これは自動にかぎらず裁量トレードにも言えることだが、ドテンと判断する
基準、トレンドと判断する基準がなければ、トレードは出来ない。
出来上がったチャートを後から見て判断することは誰にもできるが、
それでもレンジ相場の細かな定義を言える人間は少ない。
なんとなくの”形”で相場の状態を判断している証拠だ。
自動トレードシステムを作るのであれば、このような曖昧な定義のままでは先に進めない。まずは、相場の状態を定義しなければ!
とある居酒屋での会議
吉田と師匠は、2010年12月某日、都内の居酒屋にいた。
昼過ぎから自動トレードの打ち合わせをし、晩飯をかねた忘年会だった。
吉田「しかし、2010年もあとちょっとで終わりですね」
師匠「今年もいろいろあったな」
吉田「トレーディングエッジの結果に一喜一憂したり、
ともワンが離脱したり…」
師匠「こないに時間がかかるとは思ってもみなかったで」
吉田「自分もすでに答えを持ってるプロと組んでるから、
年内には結果が出ると思ってましたよ」
師匠「なかなか簡単にはいかんもんやな」
こんな他愛のない会話からはじまり、ある程度酒が回ってくると、
話は再び為替相場の話に移った。
吉田「自動トレード開発ですけど、なかなか前に進んでいるという実感が持てないんですよ。一歩ずつ進んでいるとは思うんですけど、まだ具体的な結果がないもので」
師匠「せやな。でも、今日話した戦局パターンあるやろ? あれをきちんと定義づけすれば、先が見えてくると思うで!」
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吉田「あれは納得です。たしかに、まずは相場の状態がきちんと区別できないと、仕掛けもクソもないですから」
師匠「レンジ相場、トレンド相場、ドテン。自分が今どの相場に向き合っているのか、まずこれがわからんことには、狙いを絞ることもできひん」
吉田「相場の4つの戦局パターンはわかりますけど、具体的にどうするのがいいですかね?」
師匠「そこで吉田っちに宿題や。押し目、ドテン、レンジブレイクの3つのパターンについて、ひとつに付き30枚ずつ抜き出し、その中で最良と思われるパターンを切り抜いてみい」吉田「ひとつに付き30枚ですか!? 3つパターンがあるから90枚も?」
師匠「せや。これは俺が弟子に指導するときのやり方やけど、それぞれ狙ってるポイントのパーフェクトオーダーを定義するんや」
吉田「パーフェクトオーダー?」
師匠「この条件がそろってたときは、いかなしゃーない。
これで引かされるなら仕方がないというパターンや!」
こんな感じで思わぬ宿題をもらってしまった吉田だが、師匠が大阪に戻った後、年末の最後の1週間を使って宿題を片付けることにした。
戦局パターンとパーフェクトオーダー
師匠が大阪に戻った翌週から、過去チャートからの切り抜き作業がはじまった。例えば、これは「ドテンのパターン」をキャプチャしたものである。
※クリックで拡大出来ます。
当時使っていたインジケータの詳細はよく思い出せないが、トレンドの強さをオシレータのヒストグラムの積算で数値化し、それぞれのチャートパターンを判定していた。あとは、キャンドルをモノサシに、相場の状態を判断した。
機械的にチャートを切り抜き、選別するだけの作業だったが、結局2日を要した。これはドテンのパターンを切り抜いた画像をリストアップしたものである。
このようなキャプチャ作業を、ドテン、レンジブレイク、押し目、高値安値ブレイクと4つに分類して行った。
一旦キャプチャした画像は後から見直し、師匠の言うところの
パーフェクトオーダーと、失敗トレードに分けた。
実に地道な作業である。
この年の仕事納めは12/27と決めていたが、26日の午後にすべてのパターンの切り抜きと分類が終わった。
なお、分類が終わった後の各戦局パターンについてメモが残されていた。
各戦局パターンの総括メモ
- 縦横斜めの考え方が基本
- 特に重要なのが「横」
- ローソクの足組については、一日の長がある和尚にさらに練ってもらう
- 高値安値ブレイクは不要
- 各ストラテージは、エントリーパターンよりも、相場の状態の定義が重要(何を持ってドテンとするか?など)
- ドテンのストラテージは、和尚にもパターン化に参加していただく
(過去数ヶ月かかっている事もあり、容易ではない) - ドテンの中には捨てるべきパターンも含まれている(今回切り抜いた画像はすべて対象)
メモにもあるように、いろいろと気づきはあったものの、
先行きの不透明さを感じさせた。
2日間のチャートパターンの切り抜き作業を通じて、やはりヨコの流れを
どう定義するか? 機械にどう認識させるか?
この問題が改めて浮き彫りになった。
特に強く必要性を感じたのは、各相場の状態をどのように判断し、
現在の相場が4つの戦局パターンのどれに当たるかを判断するかだ。
これが見えないことには先に進めない。
人間が裁量で判断する場合も、チャートの右端で、その先の相場がどの戦局に移行するかを予測するのは難しい。
終わったチャートなら
なんとでも言える
まさにこれに尽きる。
しかし、機械の場合は、終わったチャートでも相場の状態を判断できない。
これは結局、それぞれの相場の戦局を明確に定義しきれてないためだ。
まさに、堂々巡りだ。吉田は作業が終わったことを師匠に電話で告げ、
切り抜いた画像をドロップボックスに保存してその年の仕事を終えた。
師匠とは、年が明けたらこの件についてさらに協議をすることを約束した。
ある程度、ドローダウンを許容して、トレーディングエッジで運用を始めておけばよかったのか、この時点ではまだ分からなかった。
過去チャートで機械がきちんと相場状態の判断が出来るようになれば、右端での判断にも生かせますし、過去チャートのデータベース化にも繋がるキーになる技術だと思うのですが・・・なかなか難しいですね^^