奮戦記:モノサシをどう使うか?
前回のあらすじ(基準を手に入れろ!)
1分チャートにひとつ前の1時間足を表示することで、
いままで見えなかったものがおぼろげながら見えてきた。
これまで、なにもないと思っていたところには、人が判断を悩ませる明確な基準があり、ヨコの流れについても、転換のポイントになるポイントが見えてきた。胸を張って自動トレードに活かせるといえるものではないが、
なにか吹っ切れるものを感じていた。
単純なインジケータではあったものの、チャートの中に基準線を
設けられたことで、これまでずっと暗闇の中をさまよっていた我々に、
一筋の光が差し込んできた。
次の問題は、この新しい基準をどのように自動トレードに活かすか?
また、相場をタテ・ヨコ・ナナメでとらえることの重要性に気づいたが、
これをどう活かすか? 新たな問題が目の前に現れた。
裁量トレードとの差
為替和尚キャンドルと名付けた1分足に、ひとつ前の1時間足を表示する
インジケータ。このインジケータは、相場のモノサシをもたらしただけで
なく、裁量トレードと自動トレードの明確な差を教えてくれた。
裁量トレードをリアルタイムで行う場合、たいていのトレーダーは複数の
画面を表示させている。この時の師匠(為替和尚)は、チャートの表示用に
8画面、発注や情報処理用に3画面。計11画面を用意していた。
大阪の師匠宅におじゃましたときは、トレードルームで実際にリアルで
レートが動いている時に、それぞれの画面をどう利用しているかを聞いた。
吉田「しかし、いつ見てもすごい画面数ですよね。これだけの情報ちゃんと見てるんですか?」
師匠「見てないよ! と言いたいとこやけど、全部見てるで!」
吉田「よかった。またインジケータの時みたいに、見てないよ!
って言われたらどうしようかと思いましたよ(笑)。」
師匠「メインでトレードする通貨はポン円(GBP/JPY)とコアラ円(AUD/JPY)やけど、円を触るならドル円(USD/JPY)も見とかなあかんし、ドル絡みでユロドル(EUR/USD)も見とく必要がある。
トレードする通貨ひとつにつき、最低3つのタイムフレームは見とかな」
吉田「しかし、これだけあったら、迷いませんか?」
師匠「それは慣れやな。位置を固定すると、どこにどの情報があるかすぐわかるので、瞬時に必要なところをチェックできるんや」
吉田「なるほど…」
こんなやりとりだった。
チャートに表示されたたくさんのインジケータやオシレータの情報は、
全部見てない師匠も、マルチモニタに表示された各通貨ペアの情報は
くまなくチェックしているようで、改めてプロトレーダーが多くの情報
を処理していることに驚かされた。
しかし、自動トレードの研究になると、ついつい1画面に表示されている
情報だけで判断をしてしまう。
もちろん、MT4はマルチタイムフレームを扱うことはできるが、
過去チャートの場合は、見ている時間足のチャートの情報を読み取るのは
容易だが、その他のタイムフレームの情報は利用しづらい。
それは、複数のチャートを表示させていても、スクロールまで連動してくれるわけではないので、自分で時間を調べて遡る必要が有るためだ。
この作業がとても億劫なので、ついついひとつのタイムフレームだけを
見てしまう。実はこれは
トレード初心者がトレードルールを作るときにもはまる罠
でもある。
流れを見るためのチャートと、エントリータイミングを測るチャートは
異なる。しかし、検証時にはついついエントリータイミングを測る
チャートのみに着目してしまうのだ。
為替和尚キャンドルによって、エントリー用の時間足の情報だけに
たよるという状態は脱することが出来るようになった。
ヨコの流れをどう定義する?
自動トレード開発をしていると、なんども同じ所に戻ってくる感覚に襲われる。実際、この時も再び、「ヨコの流れの定義」の問題に戻ってきた。
レンジ相場の問題もそうだが、結局は「ヨコの流れをどう捉えるか」
という問題に尽きる。
モノサシは手に入れたものの、それをどう活かせばいいか方向性の
見えなかった吉田は、師匠に相談することにした。
吉田「為替和尚キャンドルによって、今まで意識してなかったものや、
流れって言うものがおぼろげながら見えてきたんですけど、
これを自動トレードで利用するには、どうしたものですかね?」
師匠「そこまで難しく考える問題かな?」
吉田「何かが見えかけているだけに、チャートを見ているとなんか
モヤモヤするんですよ」
師匠「そやな、じゃあ吉田っち! レンジ相場ってなんやと思う?」
吉田「レンジ相場はレンジでしょう。ボラティリティが不足している相場ってことじゃないですか?」
師匠「そや! で、何を持ってボラがないと判断するんや?」
いつになく、意地悪な質問だなと思いつつ、吉田は考えた。
吉田「……。ボリバンが横走ってるとか、ボリバンの幅が狭くなってるとかですかね?」
師匠「いい線いっとるで。トレンドの定義は以前に吉田っちがしてくれたように角度や。デッドバンドを作ったんやからわかると思うけど、その時の考え方の中心になってるのは値幅やろ?」
吉田「移動平均線の角度と、その間の値幅ですね」
師匠「それや! レンジ相場というのは、角度が横向きになって上値と下値の値幅が狭くなった状態や。大体10pips以下になってることがほとんどやな」
吉田「なるほど。なんとなく言いたいことが分かって来ましたよ」
師匠「レンジからのブレイクアウトを狙いたいなら、
明確に”今がレンジやっ!”って判断できることが大事やねん。」
吉田「つまり、レンジ相場の定義ができてなければ、ブレイクもクソもないと」
師匠「そうそう。そういうこと! ちなみにデイトレーダーからすると、これはノイズやって言われるかもしれないけど、スキャルパーは15pipsあればそれはトレンドと判断できるからな」
明確な指針が示された。
狙うポイントを明確にしたいのであれば、これはレンジ、これは
ブレイクアウト、これがドテンといった感じで、きちんと相場の形を
定義できている必要がある。
人間がトレードするなら曖昧でも許される部分も、機械にトレードさせるなら明確にする必要がある
なんども確認していることだが、改めてその重要性を認識させられた。
気がつけば12月。師走である。
2010年も残りわずか。
次週、忘年会のために師匠が上京してくるので、そこで改めて
今後の方向性について話し合うことを約束した。
しかし、これがえらい置き土産付きだと、吉田は知る由がなかった。