奮戦記:基準を手に入れろ!
前回のあらすじ(先の見えないトンネルのなか)
春先から開発を進めていた自動トレードシステムの開発が頓挫し、
先の見えないトンネルの中をさまよっている間隔にとらわれていた。
吉田は状況を整理するために、師匠である為替和尚から習ったFX相場に関することをブレインダンプし、マインドマップに描き写した。為替和尚は、マインドマップにより可視化された自らの相場観を
再確認しつつ、やはり最も重要度が高いものは節であると判断した。特に重視しているのは、1時間の節であり、それをわかりやすく表示するためのインジケータの作成を吉田に依頼した。
師匠より依頼されたインジケータは、1時間の高値安値を表示させる
インジケータである。最も近いものがカスタムキャンドルというインジケータだが、カスタムキャンドルはその時間の値動きを、マルチタイムフレームのローソク足として表示するものだ。
師匠は、単に異なるタイムフレームのローソク足を表示するのではなく、
1本前の高値安値を、現在の時間に表示するインジケータを要望した。
なぜ、そんなインジケータが必要なのか?
吉田にはにわかに理解できなかったが、師匠の強い要望により、
インジケータの開発がはじまった。
田の字の発想
師匠(為替和尚)から依頼されたインジケータの原型は、すぐにできた。
当たり前だ。ローソク足に見立てた線の描画以外は、1本前の1時間足の
四本値(高値、安値、始値、終値)を表示するだけのシロモノである。
しかし、チャートに表示して眺めていくうちに、あれこれと表示を足してみたくなった。一番最初にやった作業は、ローソクの中間線を引く改良。
これで、たんなる四角い箱が「日の字」になった。
次にやった改良は、ちょうど30分のあたりに縦線を引く処理。
この改良で、「日の字」は「田の字」になった。
1時間毎に田の字で表示されるチャートを眺めながら、吉田はあれこれと着想した。一番大きな収穫は「これまでつかみどころがないと感じていたチャートの取っ掛かりを見つけた」ことである。
最終的なインジケータは、日の字でも田の字でもなく、方眼紙のようになっていた。相場というとりとめのない世界で
モノサシを手に入れた
ようなものだった。
そうか! 師匠が伝えたかったことは、このことなんだ!
吉田はそう直観した。
大事なことは、インジケータを作ることではなく、
チャートの中になにか明確な基準を設けることだったのだ。
新しく作ったインジケータでチャートを眺めると、
いろいろなことがわかってきた。
相場にはタテ・ヨコ・ナナメの考え方があり、タテは高値、安値、そして値幅が意識されること。ヨコは流れ、特に15分や30分、1時間など新しいローソク足が作成されるタイミングで、流れが変わること。
もちろん、例外もある。しかし、細かな違いよりも、相場をタテ・ヨコ・ナナメでとらえる視点に気づいたことのほうがはるかに重要である。
闇の中の光
マインドマップと新しいインジケータにより、世界が違って
見えるような気がした。たぶん、気のせいだろうが、少なくとも胸の中
のもやもやはなくなっていた。インジケータをドロップボックスに放り込み、早速師匠に電話をかけた。
吉田「この間、依頼されたインジケータはドロップボックスにおいたので、ちょっと見てみてください」
師匠「どれや…? これか。うわっ! 吉田っち、線だらけやな!!」
吉田「最初は枠だけだったんですけど、チャートを眺めてるうちに、あれこれと気付かされることがあって、いろいろ線を足してみました!」
師匠「どうみるんや。外枠の太線の色の違いはなんや?」
吉田「ピンク色の場合は、1本前の1時間足は陰線だったってことで、水色は…」
師匠「陽線やな。なるほど。中間の水色の点線は仲値やな。で、これが始値と終値。うん、依頼したものはできとるな。これみて何か感じたことある? 吉田っち」
吉田「いろいろと気づきました。自分が考えている以上に、前の1時間の節(高値、安値)が意識されていることと、30分とか1時間とか区切りのいい時間で、押し目になったりすることが多いですね」
師匠「そうや。俺はスキャルパーだから、1分チャートを見ることが多い。しかし、1分はあくまでもタイミングを見てるだけや。5分の流れについていき、1時間の節を意識してる」※クリックで拡大します
吉田「なんで、1時間なんですかね?」
師匠「1時間足は、デイトレーダーが強く意識してるんちゃう? 前にも説明したように、節っていうんは、みんなが意識してはじめてワークするからな。みんなが見てない節は、単なる思い込みやで」
吉田「全部が全部そうじゃないですけど、前の1時間の4本値で、面白いように一旦動きが止まりますね」
師匠「そこが転換点なんや。みんな引かされるのは嫌なんで、一旦そこで利確する」
吉田「あと、30分とか、60分といった区切りのいいところ、15分間隔だと思うんですが、なんか流れが変わることが多いのはなんでですかね?」師匠「それは、その時間帯に別のタイムフレームの新しいローソク足ができるからやで。新しい足ができるタイミングを狙って、しかける奴が多いちゅうことや。俺もそうやで」
吉田「なるほど!」
2人とも晴れ晴れとした気分で、報告を兼ねた打ち合わせは終了した。
新しいインジケータの開発は、自動トレードには直接結びつかないかも
しれないが、相場をみるためのモノサシを手に入れたことは大きい。
何を意識すべきで、どこを見るべきか?
移動平均ベースでチャートを見ると、基準が曖昧のままだが、
モノサシを使えば、相場のどの部分を見ているかが一目瞭然だった。
次の課題は、新たな視点でどう相場に向き合い、自動トレードに生かしていくかだった。まだまだ課題は多かったが、次にどこへ向かうべきかはおぼろげながら見えていた。
和尚さんのサイトでも相場をタテ、ヨコ、ナナメで捉えるということを説明していますが頭でわかっているけど実践で活かせてないのが実情です。これをもう少し噛み砕いて説明していただけないでしょうか。そしてそれを実際の相場でどう活かしていくか具体例などあげてもらえると幸いです。時間があるときにでもお願いします。