奮戦記:プロと素人の差はどこにある?
前回までのあらすじ(ボラのないところを避けろ!)
これまで作ってきた自動トレードのルールに共通している欠点として、ボラがないところで負けていることだった。
そこで、今まで先送りしてきたボラティリティの数量化に挑戦し、苦心の末、デッドバンドというインジケータを作り出す。
しかし、デッドバンドは裁量トレードでは使えるが、自動トレードで使うには難しいことがわかった。
今回はデッドバンド開発中の期間の話である。
師匠である為替和尚は、ほとんど毎日のように吉田に電話をかけてきて、
スカイプを使いながらチャートの見方、トレードの考え方を説いてきた。
マンツーマンのトレード指導といったところか?
プロトレーダーからの直接指導といえば、みんながうらやむ状況かもしれないが、この時は考案する自動トレードシステムがどれも問題を抱え、勝ち組トレーダーのトレードルールさえあれば簡単に自動トレードシステムを開発できると考えていた吉田にとって、焦りばかりがつのる時期だった。
同じチャートを見ながら指導
出会いから1年が経ち、最初はエントリー条件を中心に伝えていた師匠も、それだけでは勝てる自動トレードシステムが出来ないと悟り、自分ならどうトレードするか? といったトレード指導に切り替わっていった。
はじめの頃はMT4に同じテンプレートを入れてそれぞれのチャートを眺めていたが、2010年に入り状況が変わった。
画面共有ソフト(リモートアクセス)のTeam Viewerである。
Team Viewerとは?
Team Viewerは有償の遠隔操作ソフトである。しかし、個人利用は無料で使える上、iPhoneやAndroidでも利用可能。
なにより、これまで無料で出ていたソフトに比べると、画面描画が高速で極端なタイムラグなく相手の画面を見ることができる。
ファイアウォールやルーターを意識せず、インターネット経由で簡単にアクセスできることが非常に大きい。2010年当時の遠隔操作ソフトは、きちんとネットワークの設定をしないと、リモートアクセスできないものが多かった。
チャートを見ながらの指導といえば、Team Viewer+Skypeを使ったものになり、師匠の家のパソコンに繋ぎ、マンツーマン指導を日に1時間くらい行った。
自動トレードで勝てない理由はなにか?
これまでも師匠に相場に関する指導はあったが、どちらかと言うと自動トレードを意識したもので、トレードルールありきだった。
トレードルールはたしかに大事だが、「師匠が勝てる!」と考案したルールを自動売買ソフトに落としこんでも、プロフィットが出ない。
師匠も「裁量なら勝てるのになぁ」と仕切りに首を傾げていた。
吉田は今回がはじめての自動トレードシステム開発ではなかったし、
競馬の世界でも自動売買に挑戦している経験があった。
その経験から原因をいうと
パフォーマンスが出ない理由は、
数値化出来てない要素がある
FXよりもはるかに裁量の要素が多い競馬での経験から、FXでも数値化出来ない要素があることがわかっていた。
では、FXでは何が数値化できていないのか?
ボラティリティだ。数値化出来てない要素を数値化するため、ボラティリティを判断するインジケータの開発を行なっていた。
インジケータの開発は吉田が中心に行うしかなかったため、師匠は自分のトレードの核になる考え方を吉田に伝えようとしていた。
吉田の中で何かが変わったのは師匠のある一言である。
みんなが狙っているポイント=大陽線、大陰線
その日も夕方のロンドンオープンから、Team Viewerを使った指導が始まった。夕方という時間帯は、吉田にとっても仕事が一段落した時間であり、師匠にとってもボラティティが出始める時間だから都合が良かった。
いつもようにチャートを見ながら師匠が言う。
ここ抜けたらショート行くで!
師匠はサポレジをポイントしながら、そういうと、大きな声で「ショート!」と叫んだ。
するともみ合っていたチャートは、ズドンと下に突き抜けて大陰線となった。
このトレードで7pipsの利益だ。
吉田「すごいですね!」
師匠「たまたまや、でも、トレードがうまくなると、たまたまがよく当たるようになるんや」
吉田「いやぁ、すごいですよ。どうして事前にショート(売り)だってわかったんですか?」
師匠「ええか、吉田っち。大事なのはサポレジやで。今回の場合はここのサポートラインで何度も跳ね返されてるやろ? だから、ここを抜ければ下に行く可能性が高くなるんや」
吉田「なるほど。」
師匠「みんなが狙っていたポイントだから、そこを抜けた時に大陰線になったんや」
師匠はチャートを説明するときに、よく「市場参加者の心理」という言葉を使う。言葉の意味としては分かるのだが、実感がわかなかった。
しかし、この「大陰線」「大陽線」が出来る理由を説明され、なにかを掴んだ気がした。
※クリックで拡大します。
師匠はそれを察してか、過去チャートに戻り、大陽線や大陰線の出ているポイントを見せた。どれもなにか基準になる節を抜けたあとに、大きくローソク足が伸びている。
みんなが意識している節を抜けたから大陽線、大陰線ができる
エントリーの重要なポイントをつかんだ気がした。
そこに至る流れが重要
これまで大陽線や大陰線にはあまり意識が行かなかった。
エントリー直後に伸びれば、ラッキー程度の扱いだ。
しかし、これが大きな間違いだと気付かされた。
チャートの向こう側には世界中のトレーダーがいる。
誰も負けようと思ってエントリーする人はいない。
しかし、プライスを大きく動かすには、それだけ大きな玉が必要だ。
自分一人では相場を動かす事はできないが、それが100人、1000人、1万人と自分と同じポイントで売買をする人が増えれば、相場はそちらの方向に動く。
これが大陽線や大陰線が出るポイントなのだ。
師匠は吉田の理解を確かめるように言った。
吉田っち、縦横斜めや!
- 縦はプライス。みんなが意識している節(価格)がどこにあるか?
- 斜めはバイアス。縦と横が重なった時に、右斜め上(買い圧力)に力が加わるのか、右斜め下(売り圧力)に力が加わるのか?
- 横は流れ。どういう経緯をたどっているか。
この日のレクチャーは今までバラバラになっていた思考に、一本芯を通した。
縦のプライスについては、インジケータを入れれば誰でもどこに節があるかは確認できる。
しかし、プロトレーダーや勝ち組トレーダーは、チャートの横の流れを読み取り、どこの節がポイントになっているかを瞬時に判断できる。
師匠もよく言っているが、勝ち組と負け組の分水嶺になっているのは「横の流れを読み取れるか?」ということだ。
確かに横の流れは大事ですね。
それを意識し始めてからパフォーマンスが変わりました。
一度流れを掴めば調子良く判断を下せて成績も良いのですが、
当然しばらくするとまた流れが変わってきます。
なだらかな上昇だったのが一気にブレイクしていったり、逆に崩れたり…
そういう時に乗れなかったり、
焦って悪手を連発して余計に負け込んだりするのが今の課題です^^;