奮戦記:トレンドの正体ってなに?

2013/02/28 カテゴリ:数値化, 自動トレード開発奮戦記
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トレンドの正体って何

前回までのあらすじ(目の前にある危機にどう向き合うか)

1日200pipsという驚異的なパフォーマンスを叩き出した「トレーディングエッジ」だったが、ロジックに利用していたインジケータのリペイントの問題が発覚し、検証通りのパフォーマンスがでないことがわかった。

トレーディングエッジは、もともとドテンを狙ったシステムであるが、トレンド相場の時にはこれが裏目に出てしまう。そこでトレンドの概念を加えたところ、トレンド相場の問題は収まったが、ドテンのエントリータイミングはかなり遅くなってしまった。


また、ストップ幅を広げたため、ドローダウンも大きくなったのも問題である。パフォーマンスをあげるには、リペイントの問題に再度取り組むか、もともと負けていたレンジ相場でのパフォーマンスを改善する必要があった。


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ボラがないときはアカンで!

師匠(為替和尚)は自分のトレードをかなり明確にルール化できている。
エントリーポイントでは、チェックする条件を細かくあげることが出来る。


実際裁量トレードでならば、師匠が作るルールはことごとくワークするし、勝てる。でも、枕詞のようについてくるのが

ボラがないときはアカンで!

ボラ=「ボラティリティ(価格変動率)」のことだ。
魚の「鯔(ぼら)」のことではない。

◯ボラ ×鯔

ボラティリティが高い状態とは、市場参加者の多い状態を指し値動きがある状態だ。実際、ボラがあるときは、テクニカルはすべからくワークする。
初心者でも勝つのが容易な相場である。


自動トレードとプロトレーダーの裁量トレードの明確な差は、このボラのあるなしを明確に判断できるかどうかにある。


今回開発した「トレーディングエッジ」は、ボラティリティの有無を判断できない。判断の根拠はインジケータが生成するシグナルだけである。目で見ればすぐにボラがあるなしは判断できるのだが、これを機械にどう処理させるか? ずっと避けてきた難しい問題である。

吉田「師匠がよくいってるボラのある状態ってなんでしょうね?」
師匠「え? そんなの見ればわかるやん!」
吉田「ええ、目で見ればボラがあるところはわかるんですよ。でも、それをどう機械に伝えるか、自動トレードに活かすか、全然目処がたたないんです」
師匠「裁量なら、一目瞭然なんやけど、自動トレードは全部機械に覚えさせなあかんから、そういうところが大変やな」
吉田「そもそも便宜上、ボラっていってますけど、実際はトレンドが発生しているかどうかですよね?」
師匠「そやで。ボラがある状態とはトレンドが発生していて、十分な値動きのある状態やで」
吉田「ということは、そもそもトレンドってものを定義しないと、値動きだけではボラティリティは定義できないってことなんですよ」
師匠「というと?」
吉田「一般的にボラティリティを判断するテクニカル指標としては、ATRとボリンジャーバンドがあるじゃないですか。吉田は師匠に会う前は、ボリンジャーバンドとケルトナーチャンネルを研究してたのは知ってますよね?」
師匠「知っとるで。スクイーズやろ?」
吉田「そうです。だから、ボラティリティ=値幅って理解してるんですけど、師匠をはじめとする裁量トレーダーは、ボラがある=トレンドも発生してるって状態を指すんですよ」
師匠「そやな。両方を含んだ意味になるなぁ」
吉田「値幅は簡単です。高値と安値の差なので。でも、じゃあもうひとつのトレンドは? この両方をふくめてきちんと数量化しないと、機械にボラのあるなしは判断させられないんですよ」
師匠「数量化?」
吉田「自動トレードをふくめたシステムとして利用するには、目の前の現象を数値に置き換える必要があるんですよ」


吉田は師匠との電話による打ち合わせのなかで、課題の大きさについて説明した。師匠も目で見れば一目瞭然なのに、これを機械(自動トレードシステム)に判断させる困難さに理解を示してれた。

 

トレンドとは? ー相場の本質ー

この2週間、吉田は机に向かいながらずっと考え込んでいた。

トレンドとは? ボラティリティとは?


チャートを見れば一目瞭然のポイントを、どうやって機械に判断させるのか? この事ばかりを考えていた。


結局、この問題を解決するには、「相場の本質」に向き合い、トレンドというものに向き合うしかない。このときも紙の上に絵を描いたり、箇条書きで条件を書いたりして、ブレインダンプをくりかえした。
絵をくりかえし書くうちに、あることに気づいた。


いろいろと書きこまれた紙を横にどけ、新しい紙を取り出すと、今度は丁寧に図を描きある種の確信を得た。

これならいける!!

吉田は急いで師匠に電話をかけ報告した。

吉田「師匠! トレンドってものがわかったような気がします! ちょっと説明聞いてもらえますか?」
師匠「なんや、えらい興奮してるな、吉田っちらしくない」
吉田「ドロップボックスに図面を入れたので、ちょっと見てください」


吉田はファイル共有も可能なオンラインストレージソフトを利用し、師匠にトレンドの定義について書かれた図面を見てもらうことにした。

トレンドの定義

師匠「ちょっと説明して」
吉田「最初の図面はボラがある状態です。師匠の言うトレンドもふくめたボラではなく、あくまでも値幅が一定以上ある状態です。」
師匠「なんか、ハゲ頭に毛が生えたみたいな絵やな。」
吉田「いや、ハゲじゃないですよ、それ毛じゃなくヒゲです。値幅があってもトレンドが発生してない状態だと、単にヒゲだらけになります」
師匠「まぁ実際の相場ではこうなることはないけど、確かにそやな」
吉田「で、次の図面を見てください。同じ絵に角度をつけてみると、ほらボラがある状態になりませんか?」
師匠「ほんまやな。右肩上がりになっとる」

トレンドの定義
吉田「つまり、トレーダーが言うところの”ボラがある状態”というのは、単に一定以上の値幅があるだけでなく、それに角度がついてる状態を指すんですよ」
師匠「なるほど、なるほど!」
吉田「一般にボラティリティというと、ボリンジャーバンドやATRによって判断されることが多いんですけど、これは単に値幅だけを指してる状態です」
師匠「俺の場合は、ミドルバンドの角度とか、2σの角度とかも見てるで!」
吉田「そうです。単に値幅を見るだけではだめで、これにトレンド=角度がついた状態を見てはじめて、ボラのあるナシが判断できるんですよ」
師匠「吉田っちはなんの角度でトレンドを判断させる気でおるん?」
吉田「やっぱり、移動平均とかを使うことになると思いますよ」
師匠「まぁそやろな。この場合はやっぱりボリバンのミドルバンドとかか?」
吉田「まぁその辺はいろいろと試行錯誤してみますけど…」
師匠「ところで角度を使うのはいいとしてや、角度ってチャートを広げたり縮めたりすると、角度が変わるんだけどこれはどうする?」
吉田「そうですね。これも試行錯誤してみるしかないです。とりあえず、今回はトレンドの正体がわかったという報告なので…」
師匠「わかった! ほな、引き続き頼むわな!!」

そういって電話を切った。

トレンド=角度をどう数量化するか?

「トレンド=角度」と定義出来たことで、ひとつトンネルを抜けた気がする。


しかし、師匠が指摘したように、移動平均線などチャート上の線は、チャートを拡大縮小すると角度が変わる。この問題をどう対処するか?


また、角度を求める場合は、三角関数のarcTanを使うことになるが、三角関数は平面を対象にした定理である。チャートは縦横で異なる単位となる。
つまり、チャートの縦軸はプライスで、横軸は時間だ。


単位の異なるものを三角関数で処理できるだろうか?
概念は定義できたが、数量化となると、まだまだ困難な道のりに思えた。

計算式はキチンと定義してヨ。
ボクラはプログラムに従うだけだからネ。

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この記事に対するコメント

4 件のコメント

  • まつもと
    2013/02/28 21:19

    ボラって本当に難しいです…

    自分は振り返ればそうだった、っていうのは多いんですが…^^;

  • 2013/03/01 22:07

    ボラのあるなしは、後からじゃないと分からないですからね。
    特にボラのない状態は。
    でも、まずは終わったチャートでトレンドを定義できないと、先に進めないと思ってます。

  • つっきぃ
    2013/03/03 01:52

    初めてメールします。
    機械という永遠の素人相手の奮戦記を
    毎回楽しく読ませていただいています。

    前日高・安値等大きな節目で大きなブレイクアウトが発生しているか
    或いは大きな反発があるかとか、
    高値の切り上げと安値の切り下げの回数がどちらかに偏っているか
    或いは概ね同じ数か、とか
    何が起こるとレンジ相場になりやすいか
    レンジ相場になると何が起こるかとか、レンジそのものよりも
    その因果関係を見ていくとどんなものになるんでしょうか。

  • 2013/03/03 13:42

    つっきぃさん
    因果関係というより、チャートの向こう側にいる世界中のトレーダーがどんな心理状態なのかってことじゃないですかね。
    あと、レンジ相場は大口機関投資家が玉を集めるために、意図的に動かしていることもありますし、相場が動く要因って実に多くあると思います。