あなたはどう見る? 1時間の節の戦い
新たな局面を迎えた自動トレード開発。
「パトリオットシステム」、「パトリオットシステムNeo」と2つのシステムを考案、検証してみたものの、期待していたパフォーマンスはまったく出ず、解決の糸口が見えなかった。
そんな時、師匠である為替和尚は、「インジケータをいくら組み合わせても答えは出ない。基本に戻る」ことを宣言。
裁量トレードで重視していたポイントを取り入れることにした。
これまでのルールも裁量でワークすることは確認していたが、自動トレードのルールにしやすいように考えられていたので、中心はあくまでもインジケータ。
「プロトレーダーの考えを機械に落としこむこと」を考えていたのに、
作りやすさを優先して人間が機械に寄っていては本末転倒だった。
師匠の原点回帰宣言は、ある意味必然といえる。
その中で師匠が特に意識すべきものとして持ち出してきたのが、
1時間の四本値だった。
1時間の四本値はみんなが意識する
中指、移動平均線、トレンドライン、フィボナッチ……。
世の中にはサポレジとして使えるものがたくさんある。
でも、サポレジとして使うためには、
みんながその節を意識すること!
これは出会った当初から師匠が「くり返してきた言葉」である。
意識されているサポレジでは、
「そこの節を超えたら買ったろ」と思うやつと
「その節ではね返ったら売ったろ」と思うやつがいる
師匠はこのセリフを枕詞のようにくり返していた。
FXトレードの筆記試験があれば、必ず出題されていただろう。
師匠は近いうちに、自分の考え方を盛り込んだ新しいルールを考案することを約束した。
そして、2010年4月某日。師匠と吉田は名古屋で再び、トレードルール
の打ち合わせをすることになった。
名古屋になったのは、ともワン主催のオフ会が名古屋で開催されるためだ。
師匠と名古屋駅周辺の喫茶店にはいり、さっそく打ち合わせがはじまった。
師匠「吉田っち。1時間の四本値はデイトレーダーも意識している節や」
吉田「デイトレで使うタイムフレームは、1時間がメインですから、そうでしょうね」
師匠「重要なのは銀行みたいな大型機関投資家も、基本的にはデイトレードだから、1時間を意識しているということや。大きな玉持った連中が意識している節は、トレードから抜いたらあかん!」
吉田「だったら、フィボナッチはどうなんですか? 結構使ってる人いますよ」
師匠「フィボはどうとでも引けるし、フィボを意識しているのは、ヨーロッパの連中ばかりやな」
吉田「わかりました。とりあえず今までのルールに抜けていた節の概念を入れるのはいいとして、これをどう活かすのでしょう?」師匠「まず、これを見てくれるか?」
師匠は紙を取り出すと、そこに図を描きだした。
「この図見て分かるか?」と師匠は質問をし、吉田はたびたび聞かされてきた「1時間の四本値は買い手と売り手が戦うところ」だと答えた。
師匠「そうや。みんなが意識する節ってのは必ずそこで戦いが起きる。その節を抜けたら買うたろと思ってる奴と、はね返ったら売ったろと思ってる奴や。」
吉田「売り手と買い手が戦うというのは分かるんですが、今度は1時間のブレイクアウトを狙うというわけですか?」
師匠「ちゃう。それは当て屋の発想や。大きな喧嘩は金持ってる奴にはかなわへん。だから、勝った方についていくのが俺の考えや」
吉田「よく言ってる、大人の喧嘩には参加するなってやつですか?」
師匠「吉田っちや俺がなんぼ金持ってても、機関投資家には勝たれへん。だから、売り手が強いか、買い手が強いかは金持ちに決めてもらう。俺は勝った方についてくだけや」
吉田「勝ったほうはどう判断するんですか?」
師匠「売り買いの決着がつくと、流れが変わる。つまり、バイアスやな」
師匠は「まぁ見てみい」といいながら、吉田のパソコンに自分のUSBを差し込み、そこからチャートを呼び出した。
1時間の節をめぐる攻防
トレンドが継続する場合は、1本前の高値を更新していく。
反転する場合は、高値を更新できず押し戻される。
師匠はチャートにいままで見たことがなかったインジケータを表示させ、
こう説明した。師匠が狙っているのは、1時間の節に当たって跳ね返る
「ドテンのポイント」のようだった。
パトリオットNeoの基本戦略が押し目を狙うことだったので、再び第1波の
始点を狙うことに方向転換した形になる。
師匠がこの時に見せてくれたインジケータは、これまでの1時間の高値を表示するのもので、これまで続いてきたトレンドの転換を狙うのが基本戦略だと説明した。
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この時の説明は、見ているチャートの内容に納得したものの、その背景に隠れている思想までは理解できていなかった。
吉田「このインジケータは見たことないですけど、チャネルラインですか?」
師匠「そうや。1時間の高値更新、安値更新を見ているものだとおもってや。ポイントはここ。直近高値が更新されたら準備。で、バイアスが下に向いてきたらエントリー」
吉田「2段階シグナル?」
師匠「準備ができたら①番がつく。①番が出てから②番点灯でエントリーと考えてや」
吉田「これまではエントリーポイントのタイミングが来た時に、条件が揃っているかをチェックしてましたけど、今度はエントリー前に準備のシグナルが出ていることを条件に入れるんですね?」
師匠「今までのルールは、エントリーポイントを見ていると裁量なら勝てるけど、結局流れを見てないんから、入ったらあかんところでエントリーする。だから、まず①番を出すことで、横の流れを取り入れるようにするんや。吉田っち、これは出来そう?」
吉田「①番の条件とかをきちんと定義すればできますよ。単にフラグが立っているかどうかの違いなので」
師匠「フラグ?」
吉田「よくゲームなんかで、そこから先に進むためには、街中にいる長老とかの話を聞かないと先に進めないとかのアレですよ」
師匠「俺はゲームの話は詳しくないけど、フラグでイケルなら頼むわなぁ」
こんな会話をしていると、ちょうどオフ会の開催時間になったため、打ち合わせを切り上げた。
師匠が新しく考案したルールは、「1時間の節」を「流れを見る」ために利用し、MACDのクロスオーバーでエントリータイミングをとるというものだった。移動平均線とかは一切なし。基本的に高値更新、安値更新が流れを見るポイントだった。
エントリー前に準備のシグナルが出るという発想は、なかなかお目にかからない発想だ。チャートを見る限り、きちんとドテンのポイントを押さえている。そして何より…
このやり方が、師匠の考えに
一番近い
というのが大事なポイントだった。
これまでのように、「自動トレード用に考え方をあわせたものではなく、裁量トレードの考えのうち、重要だと思っているポイントを持ってきている」。
吉田は新しいルールに手応えを感じつつ、自分自身の懸案である
「開発効率の改善」も同時に着手することを考えていた。